糖尿病網膜症
糖尿病網膜症とは
糖尿病が原因の網膜疾患を糖尿病網膜症と言います。つまり糖尿病の合併症として起きる 疾患で、糖尿病三大合併症のひとつに数えられています。 最近では中途失明原因の第1位となっています。
糖尿病の治療が予防の秘訣
糖尿病網膜症も合併症の一つで、血液中のブドウ糖の過剰な状態が続くことによって網膜 の血管が損傷を受け、血管が詰まったり、変形したり、出血を起こすようになるのです。 自覚症状については、相当に重症化するまでは見られることはありません。
糖尿病網膜症の症状と分類
糖尿病網膜症は、糖尿病を発症したからといって、すぐ目に異常が生じるわけではありま せん。発症してから数年~10年程度の時間を要します。そのため、糖尿病治療で行う血糖の コントロールをしっかり行うことが最も大切です。
網膜症の経過は初期にはほとんど自覚症状がなく、定期検査で発見される程度です。初期でも黄斑部に変化が起こると視力低下が起きます。 さらに進み、出血、増殖変化など強くなると視力低下も著明になります。 進行程度により単純糖尿病網膜症・増殖前糖尿病網膜症・増殖糖尿病網膜症の3段階に分 類されます。
糖尿病に10年以上罹患すると約50%、20年以上で約s80%に網膜症が合併するといわれています。
検査について
糖尿病網膜症が疑われる場合は検査を行います。問診・視診後に、必要に応じて以下のような検査を行います。
視力検査
他の目の疾患と同様に、視力検査はやはり重要な検査です。特に矯正視力は診断において重要で、矯正視力が1.0以上出ないようなら何らかの異常があると推測します。
眼底検査
目の奥に光を当てて網膜を直接観察し、網膜やその血管の状態を調べます。散瞳(点眼により瞳孔を大きくすること)のうえ検査をすると、微細な出血も把握できます。
蛍光眼底造影検査
造影剤を注入しながら眼底カメラで目の奥の血管を観察し、血管の形状や血液の流れ、 網膜の血管からの血液成分のもれなどを調べます。
光干渉断層計(OCT)検査
網膜やその下の新生血管などの状態を立体的に把握します。
治療について
糖尿病網膜症の治療は、病状の進行具合(単純・増殖前・増殖)によって変わります。 なお、いずれの段階の患者様につきましても血糖値を適正にコントロールしていくことが 基本となります。
このほか、視力低下を引き起こす「糖尿病黄斑浮腫」(物を見る際にとても重要な働きを している黄斑にむくみが生じた状態)は、これら全ての病期で起こることがあります。
単純糖尿病網膜症(糖尿病網膜症の初期)
症状としては小さな眼底出血や白斑が見られますが、自覚症状はありません。 血糖値をコントロールするだけで進行を抑えることもできます。 治療の必要は無くても定期的な経過観察が必要です。 6ヵ月に1回の割合で受診するようにしてください。 血糖のコントロールが悪い方はさらに頻回の定期受診をお勧めします。
増殖前糖尿病網膜症(糖尿病網膜症の中期)
小さな眼底出血に加え、網膜における血流が悪くなるといった症状がみられます。自覚 症状が見られないケースもあり、視力が低下しないことも多くあります。 そのまま放置すると増殖糖尿病網膜症に進行しやすく、血流不足による酸素・栄養不足 に陥った網膜に対してレーザー治療(網膜光凝固術:網膜の酸素不足を解消するほか、 すでにある新生血管を減らしたり、発生の予防効果がある)を行う必要があります。中 期では1~3ヶ月に1回程度の受診を要します。
増殖糖尿病網膜症(糖尿病網膜症の進行期)
眼内に硝子体出血や増殖膜という線維膜が生じて、それによる難治な血管新生緑内障や 牽引性網膜剥離など、様々な病態が引き起こされます。治療では、レーザー治療(網膜 光凝固)が必要ですが、それでも進行を阻止できない場合は、硝子体手術を行います。